2013年06月23日

バラスト水と外来種

6月22日 朝日新聞be(土曜日版)からの記事です。

船のタンクに入って世界中を移動

船がバランスを保つために、タンクに入れて運ぶ「バラスト水」(ウィキペディア)が生態系を壊すとして問題になっています。
船は荷揚げすると軽くなるので、その代わりの「重し」として、港の水などを「バラストタンク」に入れます。この時混じりこんだ生物が、寄港先でバラスト水と一緒に排出され、外来種として定着してしまう恐れがあるのです。

バラスト水で運ばれたとみられる悪名高い生物の一つが、クシクラゲ類(ウィキペディア)です。黒海で1980年代に増えて問題化し、その後カスピ海などでも大発生しました。もともとは北米の沿岸に生息していたこのクラゲは、魚のえさとなる動物プランクトンを食い荒らし、魚の卵なども食べてしまいます。このため、漁獲量の減少を招き、漁業に打撃を与えたと指摘されています。
このほかカニや貝類などの生物も、幼生がバラスト水に混じるなどして世界各地に運ばれ、外来種化した疑いがもたれています。

日本とオーストラリアを結ぶ貨物船のバラストタンクを調査した結果、赤潮を発生させ、養殖魚を殺す有害植物プランクトン「シャットネラ」(ウィキペディア)がタンク内の泥から1キログラムあたり140個も見つかりました。
これらは、船がバラスト水を排出する時、一緒に外部に出る恐れがあるといいます。バラスト水自体からも、カキなどの二枚貝を毒化させ、人の健康を害する「まひ性貝毒プランクトン」も検出されています。一方、貨物船のタンクから採取したバラスト水を培養してみると、外来種として海外で問題になっているアオサ類(ウィキペディア)の海藻が、実際に生えてくることが確認されました。

東京湾で国際航路の船が排出するバラスト水は年間400万トン。一方東京湾から海外に運ばれる量はさらに多く、8900万トンにものぼります。また、別の推計では、世界中で移動するバラスト水は年間30億〜50億トンと報告されています。

バラスト水によって生物が本来の生息地でない場所に運ばれるのを防ごうと、国際海事機関は04年「バラスト水管理条約」(ウィキペディア)を採択しました。国際航路の船が排出するバラスト水に含まれるプランクトンや細菌などの量を、基準値を設けて規制する内容です。
日本はまだ批准していませんが、すでに36カ国が批准しました。批准国の商船合計総トン数は世界の29.07%。これが35%以上になれば、1年後に条約が発効します。

日本や欧州などのメーカーがバラスト水を処理し、含まれる生物の量を基準値内にする装置を開発、実用化しています。オゾンや紫外線にさらす、殺菌剤を入れるなど、さまざまな方法があります。
条約の発効をにらみ、対策を前倒しする動きも出ています。設置費用は「船の大きさにもよるが1〜2億円」と言います。船会社にとって決して軽い負担ではない。ただ条約は2015年前半にも発効する可能性が高い。環境配慮もふまえ、先取りしてバラスト水対策を進めているそうです。

船による輸送が日本の貿易に占める割合は、輸出が99.1%、輸入が99.8%(2011年重量ベース)
航空機による物流が盛んな現代ですが、輸出入を支える「主役」は今も船舶です。
つまり、船のバラスト水の問題は、私たちの日々の暮らしにも大いにかかわりがあるのです。



posted by バスター at 07:27| Comment(0) | 「水」と環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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